バンクーバー留学日記。

カナダに留学してから早6年。ウエストバンクーバーの高校を卒業後、今も変わらずバンクーバー内で大学生をやっています。

現代美術と幼児教育

 

 

こんにちは、のぐともです。

特に何かスペシャルな事もなかったのでブログを放置してしまいましたが、気がつけばいつの間にかセメスターの終わりになっていました…

 

今回は社会学&哲学観点から見た幼児教育のクラスであったVisual Responseというアサイメントについて詳しく説明したいと思います!というのも実は理不尽に厳しいと言われている先生のこのクラスのこのアサイメントで私なんと奇跡的にAを取ることができたんです!自分でもなかなかうまく考えをまとめられたと思うのでブログに残そうと思います。

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Visual Response

まずこのアサイメントの説明から...

先生が選んだトピックリストから好きなトピックを選び、それに関連したcontemporary art (現代美術)を探し出して、その選んだアート作品がどう社会から見た幼児教育や幼児に関わっているのか…という自分の見解を述べるアサイメントです。

 

次に現代美術の説明。

 

Contemporary Art

基本的には1970年ごろから今私たちが生きているこの時代に作られた作品のことを指します。私の調べによると... この現代アートには「芸術はこうでなくてはいけない」という概念や、「作品の作り方や、芸術家が従わなければならない」特定のルールはなく、これをzone of freedomeと呼ぶそうです。決まったアートのあり方は存在しないため、社会的、文化的、政治的、そして宗教的な一般的にはタブーとされているトピックにもアート作品を通して言及する芸術家も多くいます。つまり現代アートはそういった物議をかもす問題を具現化されたものでもあるのです (Stallabrass, 2016).

 

Modern Art & Contemporary Art

Contemporary Art が現代アートと呼ばれているのに対して、このmodern artも現代美術、近代美術と呼ばれるのですが一応その違いはあります。まずmodern artは第二次世界大戦前に作られた作品たちのことを指し、contemporary artは大戦以降に作られた作品たちだということ。

そして第二に、modern artはありきたりなテクニック(painting, drawing, sculptures)などが使われるのに対して、contemporary artはもっとバラエティ豊かな手法にオープンだということ。例えばビデオやパフォーマンスなど。

そして第三に、contemporary artは作品を作り終えたことが作品の完成ではないこと。

"the audience [become] an integral piece in the creation of the maning and reflections of the created works" (Silka P, 2017, para. 4).

つまりその作品を見たお客さんたちのリアクションも含めてやっと作品の完成になるといった形です。

 

ではそのcontemporary artがどう教育(pedagogical role)に関連してくるのか?

これは私の考えですが、幼児教育とこの現代アートには"答えがない”、そして"speakingという手段以外の方法で声を発している”という共通点があると思います。さっき私が説明した通り、現代アートの芸術家には作品を作る上でのルールがありませんし、作品を通して自分たちの声を上げています。幼児教育も似ていて、教育方針に正しいも間違いもありませんし、全ての子供が100 languagesを持っていてspeaking以外で声を発する方法を知っています。なのでcontemporary artを理解することによって、私たち大人が子供の見えない声にもっと耳を傾けることができるのではないかと思っています。

 

さらにcontemporary artにはすでに現代の社会にあるnorms (規範)を見直す機会をくれていると思います。現代アートの芸術家たちは色々な問題に作品を通して私たちに「何を規範として見ているか」「私たちの今の社会がどうその規範によって構築されているのか」を深く考えさせてくれます。そして幼児教育でも、「そういった規範がどう私たちの教育実践や子供のイメージに影響を与えているのか」を気づかせてくれると思っています。

 

 

長くなってしまいましたがここからが本題!

色々なトピックから私が選んだのはNorms

直訳すると規範。何が普通として見られているか、という基準です。

こちらのサイトがわかりやすく解説してくださっているのでよかったらこちらを参考にしてください↓

Norm理論とは、私たちは頭の中にいろんな状況に応じたNorm(基準、デフォルト)を持っており、Normを頭の中から無意識に引き出すことでイメージしたり感情を表現したりするという理論です。

 

   例えば"鳥"と聞くと何を思い浮かべますか。 皆さんの多くはハト、スズメ、ニワトリといった鳥を思い浮かべるのではないでしょうか。 しかしトンビやガチョウといった鳥はすぐには出てこないですよね。 鳥と聞いて真っ先にガチョウを思い浮かべる人は、きっと普段からフォアグラを食している裕福な方なのでしょう。

 

   鳥と聞いて上のように真っ先にに思い浮かべる鳥というのは一つのNormです。 つまり"鳥に対するハト"は私たちにとって一つのNormなのです。

 

Norm理論とは何か

 

そのnormsがどう幼児教育に関わってくるのか...

それを説明するために私が選んだcontemporary artはこちらです。

セラミック彫刻で創られた In Me という作品。

In Mejohnsontsang.wordpress.com

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Johnson Tsang

香港人の、セラミック彫刻で世界的に有名な芸術家です。

インタビューによると、彼は芸術家になる前に警察官として13年間、その後は陶芸の先生としても働いていたそうです。こういった経験も彼の作品を作る上での貴重な一部だと語っています。

beinart.org

 

私はこの彼のアート作品から、社会の多くの人が持つ子供のイメージの規範に対しての挑戦を感じました。もちろんアートというものは見た人によって解釈の仕方は違うので、全員が私と同じ考えだとは思いません!

 

この作品を見たまま説明すると、幼い子供が大人の脳という意味での鳥かごに閉じ込められ、不機嫌そうな顔をしているのがわかります。これは「どんなふうに子供が大人たちによって見られているか」それと同時に「そんな大人たちに子供がどう制限されているか」を示しているのではないか、と私は感じました。

 

“Children’s lives are lived through childhoods constructed for them by adult understandings of childhood and what children are and should be” (Mayall, 1996:1, as cited in Dahlberg, Moss, & Pence, 2013, p. 46).

 

「子供はこうであるべきだ」「幼少期とはこうであるげきだ」という大人の理解の上で子供は生活しています。子供は周りの環境や人から簡単に影響を受けます。もちろん大人が抱く子供のイメージも簡単に子供たちに影響します。そして幼児教育者が持つ子供のイメージは教育実践や幼児教育自体の構築に影響を及ぼします。

 

よくありがちな子供のイメージは

The image of the child as reproducer of knowledge, culture, and identity, and as an empty vessel that needs to be filled (Dahlberg, Moss, & Pence, 2013).

子供は知識、文化、アイデンティティーの再現者であり、満たす必要のある空の容器であるという考え方。このアート作品の中で、子供が空の鳥かごの中にいる様子は、私にこの典型的な子供についての理解へのを挑戦を感じました。

 

もし幼児教育者がこのように子供を見ているとしたら、私たちの教育実践は「子供の知識を埋めるためのアカデミックな学習教育」に焦点を置きがちになります。つまり教師という立場は子供に教える(teaching)ためだけの存在だという認識になってしまいますが、私が思う教師というのは子供に教えるのではなく、子供と共に学び、時には子供から学ぶ(learning from and with children)ものだと思っています。

 

なので、この作品は私たちに「社会の中にすでに存在する子供のイメージ」に気づかせ、「子供は空っぽで大人がそれを埋める必要がある」という典型的な考え方を見直すきっかけをくれていると考えました。

 

そして次に「子供は純粋である」という社会の理解がどう「私たちが子供たちを守らなきゃいけない」という考えに至っているのかをこの作品は伝えているような気がしました。

 

大人は自分たちが持つ子供のイメージによって簡単に過保護になることができます。そして、「子供は純粋で大人が守らなきゃいけない存在だ」といった認識は教育者の視野を狭めます。視野だけではなく、子供たちの可能性や才能の幅も狭めてしまい、学ぶ機会も減らしてしまうことになります。

 

この作品を見ても分かる通り、子供は大人の脳という鳥かごの中に閉じ込められて悲しそうな表情をしています。私の推測からすると、これは子供の本当にやりたいことが鳥かごという狭い中で制限されてしまっているからじゃないでしょうか?さらに、この作者は子供に白い羽を与えることによって、子供は純粋であるというイメージをうまく表現していると感じました。そしてその子供を大人の脳という鳥かごに閉じ込めることによって、子供のやりたいことや、子供が今後どうなるか、ということが大人に狭められている現実を表していると思います。

 

結論をまとめると、社会的に作られた規範というものは幼児教育の構築だけでなく、子供自身や幼少期の構築にも深く影響してい流ことがわかります。規範というものは私たちが何かをするときのガイドラインのようなものですが、その存在は結局は「社会が何を規範としてみなすか」ということに基づいているため、規範そのものは真実ではありません。

 

幼児教育の中で、こういった社会的に作られた規範は典型的な子供イメージを作り上げてしまいます。そして、その子供への理解は幼児教育者としての実践に関わってきます。例えば、クラスルームのデザインや構造、マテリアル、カリキュラム、そして先生と子供間の関係性など。そのため、幼児教育者にとって「どう私たちの子供のイメージが社会によって形成されているのか」「どうそれが私たちの実践に影響を及ぼすのか」を認識する必要があると感じます。

 

そしてその認識を促してくれるのが、この作品 In Me by Johnson Tsang です。この作品は「どんな子供のイメージが社会によって規範とみなされ、私たちに定着しているのか」「どう子供の可能性がそういった典型的な子供についての理解によって制限されているか」といった考えを視覚的に具現化し、社会の私たちに挑戦してくれています。

 

この作品を分析することによって私自身、子供の見方や幼少期への理解が変わった気がします。ぜひ皆さんも自分なりにこの作品を分析し、新たな幼児教育のあり方を考えてみてください!

 

のぐとも